《連想四字熟語》村上春樹『スプートニクの恋人』から連想する3つの四字熟語

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▼これが『スプートニクの恋人』から連想する四字熟語です

廃寝忘食(はいしんぼうしょく)

他のことを考えず、ひとつのことに一心に取り組むことを「廃寝忘食」といいます。

「スプートニクの恋人」は村上春樹の小説では珍しく女性が主人公となる、一風変わった恋愛小説です。
主人公である「すみれ」はとある結婚式場で、ミュウと名乗る17歳年上の既婚女性と出会い恋に落ちます。
性別を越え、年齢を超え、結婚という枠組みまで越え「廃寝忘食」するほど彼女に対して激しい恋心を抱く「すみれ」。
結婚式場での会話の流れからミュウの経営する会社で働くことになった「すみれ」は、恋心を隠したままミュウと共に過ごす生活を送ります。

ある時、仕事の流れからギリシャへと向かうことになった「すみれ」とミュウ。
しかしギリシャで「すみれ」はこつ然と姿を消してしまいます。
一体彼女はどこへ行ってしまったのか、二人の間に何が起こったのか。

「スプートニクの恋人」は読者も「廃寝忘食」し、読み続けてしまうような不思議な物語です。

敢為邁往(かんいまいおう)

敢為邁往」とは、目的に向かって困難をものともせず、自ら思い切って、まっしぐらに進んでいくことです。

「スプートニクの恋人」には、「すみれ」とミュウの他に僕という語り手が登場します。
僕は「すみれ」に恋をしていますが、「すみれ」は僕を友達としてしか見ていません。
「すみれ」はミュウに恋していますが、ミュウは彼女を恋の対象にしていません。

そんなすれ違いの中で、ミュウから僕にギリシャで「すみれ」がいなくなったと連絡が入ります。
ミュウに呼ばれギリシャへと向かうことになった僕。
「すみれ」が置いていった荷物の中から、僕はフロッピーディスクを見つけます。
そこに書かれていた文章は「すみれ」が見た夢と、ミュウの過去に関すること。
ミュウはかつて自身に起こったショッキングな出来事を話し、「すみれ」はその内容を文章にしていたのです。

僕はその文章に「こちら側」と「あちら側」という、すみれとミュウが体験したであろう共通点をみつけます。
そこから僕は「すみれ」はミュウが過去に失ってしまったものを取り戻す為、「敢為邁往」にあちら側へと向かっていると確信を持つようになっていくのです。

教外別伝(きょうげべつでん)

禅宗で、悟りは言葉や文字で伝えられるものではなく、心から心へと直接伝えるものであるということを「教外別伝」といいます。

『理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。』

これは「すみれ」が世界を認識する為の方法として、フロッピ–ディスクの文章の中に書いていた言葉です。

「すみれ」はミュウを理解したいと思い、また自分を理解して欲しいとも考えています。
その考え方は誰しもが感じるものではないでしょうか。
好きな人のことをもっと知りたい、自分のことをもっと知って欲しい。
そういった認知欲求と承認欲求が入り交じるのが、恋というものなのかもしれません。
しかし「すみれ」、ひいては村上春樹はこの言葉の中にある思いを込めています。

それは気持ちや感情というものは、言葉で伝えようとしても伝えきれないものである、ということです。
どれだけ言葉を紡いでも、本当に伝えたいことが相手には殆ど伝わっていない。
自分を理解してくれたのではなく、なんとなくわかったつもりになっているだけでしかありません。

人は言葉を使って気持ちを伝達するように進化しました。
しかし言葉で感情を伝えようとしても、本当に伝えたいことが抜け落ちてしまう。
ではどうすればいいのか。
その答えこそが「教外別伝」です。
お互いを受け入れ、言葉に頼ることなく、寄り添いあって同じ道を進むことで初めて「教外別伝」が可能になるのです。

風の歌を聴け」の冒頭で、村上春樹は「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」と書いています。
この言葉と、理解は誤解の総体である、という言葉には共通点があります。
それは、言語による相互理解の難しさです。

村上春樹がこの小説で伝えたかったこととは、言葉や文章で語る前に「行動こそが重要なのだ」ということではないでしょうか。

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