《連想四字熟語》村上春樹『1973年のピンボール』から連想する3つの四字熟語

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▼これが『1973年のピンボール』から連想する四字熟語です

一意攻苦(いちいこうく)

心を打ち込んで、苦しみながら考えることを「一意攻苦」といいます。

「1973年のピンボール」は「風の歌を聴け」に続く村上春樹の2作品目の小説で、前作に引き続き「僕」と鼠を中心として物語は進んでいきます。
今作は「僕」の部分が一人称、鼠が主題の箇所を三人称で書くという実験的なスタンスで描かれました。

「僕」はかつての街を離れ、東京で翻訳の仕事をしながら生活をしています。
鼠はかつての街で暮らしながらも、いつこの街を出ていくかについて思いを巡らしていました。

しかし鼠には「僕」と違って出て行くべき場所、逃げられる場所がありません。
金持ちの親の庇護の元、親から貰った広いベランダを持つマンションに住み、そこのガレージにはトライアンフが置かれている環境。

端から見れば羨ましくも感じるその生活は、鼠自身が嫌いだというブルジョアに守られた生活であり、言いようのない不安を彼に与えます。
鼠は真綿で首を絞められるような生活からなんとか抜け出そうと、「一意攻苦」して出口を探しているのです。

合浦珠還(ごうほしゅかん)

合浦珠還」とは、一度失った大事なものが、再び手に戻ることのたとえです。

「僕」はあるときから「3フリッパーのスペース・シップ」というピンボールを探すようになります。
これこそが表題にあるピンボールなのですが、はたしてこのピンボールとは一体何を表現しているのでしょうか。
鼠との記憶に対する郷愁なのか、直子との別れを紛らわす為に向かい合っていた過去の自分自身なのか。

「あなたがピンボール・マシンから得るものは殆ど何もない。(中略)失なうものは実にいっぱいある。歴代大統領の銅像が全部建てられるくらいの銅貨と(中略)、取り返すことのできぬ貴重な時間だ」
「ピンボールの目的は自己実現にあるのではなく、自己変革にある」

この2つの文章が意味するものは、「ピンボールとは失った自分の過去と向き合う為の道具である」ということではないでしょうか。
思考という名のボールを打ち出し、そのボールの動線が過去の自分と今の自分を繋げていきます。

かつての街から出たことは「僕」にとっての逃避行動でした。
相棒だった鼠や自分の居場所でもあったバーとの別れ、そして直子との思い出。
過去に自分の意思で捨ててきたはずのものが、実は心の中に楔としてずっと残っていました。
その楔を抜く為に「僕」はピンボールと対面するのです。

「僕」が打ち出した言葉のボールを、スペース・シップはフリッパーのように的確に打ち返します。
その言葉のやりとりは徐々に孤独や悲しさを打ち消していきます。
「僕」はスペースシップと「合浦珠還」することで、直子への悲しみや寂しさを受け入れられるように自己変革できたのです。

輔車相依(ほしゃそうい)

両者が互いにもちつもたれつの関係にあるたとえを「輔車相依」といいます。

「1973年のピンボール」は、「僕」と鼠の話が重なり合うことで物語が紡ぎ上げられています。
しかし、それらはあくまで毛糸のように絡み合うだけで、液体のように混じり合うことはありません。

この物語には、実は2台のスペース・シップが出てきます。
一台はジェイズ・バーにあったもの、もう一台がゲームセンターで「僕」が165,000点をだしたものです。
ジェイズ・バーのスペースシップは鼠の、もう一台は直子のメタファーとして書かれていますが、「僕」がどちらのスペーしシップを求めていたのかは作中では書かれません。

ただ「僕」が最後に出会ったのはゲームセンターの、つまりは直子のスペース・シップでした。
「僕」と鼠の物語でありながら、二人は最後まで交差することはありません。

そこにこそ、この小説のテーマがあるのではないでしょうか。
相棒でありながら別れの理由も出てこない。
同じ小説で語られながらも出会うことがない。
つかず離れず、ジェイズ・バーを中心にして絡み合うその姿は、まるでDNAの二重螺旋構造のようです。

「僕」と鼠は一見お互いに頼らないように見え、しかし心では繋がりを持って、ある意味で唯一の拠り所として生活しています。
そんな「輔車相依」の関係だからこそ、二人はお互いを相棒たりえる存在としていたのではないでしょうか。

二人の距離はそのまま続いていくのか、それともどこかで邂逅するのか。
その答えが次作の「羊をめぐる冒険」で書かれていきます。

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