「五里霧中(ごりむちゅう)」とは、物事の手がかりがつかめずにいること。この四字熟語の使い方の実例を紹介します。
▶︎寺田寅彦『物理学の応用について』
もし問題の分析をせずに研究すればいつまでたっても要領を得ないで五里霧中に迷うような事になってしまう。甲の場合に試験した結果と乙の結果と全然齟齬したりするのは畢竟このためである。
もし問題の分析をせずに研究すればいつまでたっても要領を得ないで五里霧中に迷うような事になってしまう。甲の場合に試験した結果と乙の結果と全然齟齬したりするのは畢竟このためである。
▶︎赤川次郎『自殺行き往復切符』
金田には、大沢のためらいが分る。妙なもので、五里霧中の間は、しゃにむに手掛りを求めて突っ走るのだが、いざ目の前にそれが置かれたとなると、今度はすぐに手を出すのが惜しくなってしまう。少しでも先に延ばしたいと思うのである。
金田には、大沢のためらいが分る。妙なもので、五里霧中の間は、しゃにむに手掛りを求めて突っ走るのだが、いざ目の前にそれが置かれたとなると、今度はすぐに手を出すのが惜しくなってしまう。少しでも先に延ばしたいと思うのである。
▶︎藤原正彦『若き数学者のアメリカ』
と同時に、その結果としてフロンティアを失った。 彼らは、どちらに向かって進んでよいものか五里霧中で立ちすくんでいる。 こういった外的、および内的要因が、若者を包んでいる漠然とした憂鬱感の主要原因のように思える。
と同時に、その結果としてフロンティアを失った。 彼らは、どちらに向かって進んでよいものか五里霧中で立ちすくんでいる。 こういった外的、および内的要因が、若者を包んでいる漠然とした憂鬱感の主要原因のように思える。
▶︎浅田次郎『壬生義士伝 下』
世の行く末が混沌として定まらず、まさに五里霧中であった鳥羽伏見の戦の直後、吉村先生は爆弾を抱いて蔵屋敷に転がりこんできたようなものだったのですから。算えの十六とはいえ父の囚われた今、私は大野家の主でした。
世の行く末が混沌として定まらず、まさに五里霧中であった鳥羽伏見の戦の直後、吉村先生は爆弾を抱いて蔵屋敷に転がりこんできたようなものだったのですから。算えの十六とはいえ父の囚われた今、私は大野家の主でした。
▶︎菊池寛『日本武将譚』
京城を飛び出したのも、逃げ出した国王の宣祖を捕える積りだったのだ。五里霧中で捜し廻っているうちに、二王子に偶然ぶっつかったわけである。その後清正は、その陣所が余りに敵地と接近しているので聊か不安を感じたためか、二王子の身柄を、安全な伊達政宗に托している。
京城を飛び出したのも、逃げ出した国王の宣祖を捕える積りだったのだ。五里霧中で捜し廻っているうちに、二王子に偶然ぶっつかったわけである。その後清正は、その陣所が余りに敵地と接近しているので聊か不安を感じたためか、二王子の身柄を、安全な伊達政宗に托している。
▶︎太宰治『八十八夜』
ふっと気がついたら、そのような五里霧中の、山なのか、野原なのか、街頭なのか、それさえ何もわからない、ただ身のまわりに不愉快な殺気だけがひしひしと感じられ、とにかく、これは進まなければならぬ。一寸さきだけは、わかっている。
ふっと気がついたら、そのような五里霧中の、山なのか、野原なのか、街頭なのか、それさえ何もわからない、ただ身のまわりに不愉快な殺気だけがひしひしと感じられ、とにかく、これは進まなければならぬ。一寸さきだけは、わかっている。
▶︎三浦綾子『銃口』
何十年後、初めて聞くこの話に驚き、私はこれをアレンジして小説の中に書いた。舞台が満州に移ってからは、更に五里霧中の感があった。が、それだけに眞杉章氏から懇切なアドバイスと多くの示唆をいただいた。
何十年後、初めて聞くこの話に驚き、私はこれをアレンジして小説の中に書いた。舞台が満州に移ってからは、更に五里霧中の感があった。が、それだけに眞杉章氏から懇切なアドバイスと多くの示唆をいただいた。