《連想四字熟語》村上春樹『国境の南、太陽の西』から連想する3つの四字熟語

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▼これが『国境の南、太陽の西』から連想する四字熟語です

孤影悄然(こえいしょうぜん)

孤影悄然」とは、ひとりぼっちでさみしそうな様子や、しょんぼりして元気がないさまです。

「国境の南、太陽の西」は、主人公である始(ハジメ)の子供時代の回想から始まります。
同級生や周囲の家庭のほとんどに兄弟がいる状況で、自分だけが一人っ子であるということに引け目を感じている始。
そんな時、転校してきた島本さんとの出会いが始を変化させていくのです。

島本さんも一人っ子でお互いの「孤影悄然」とした雰囲気を感じ取り、二人は徐々に仲良くなっていきます。
この出会いが将来どのような影響を及ぼすのか、この時はまだ分かりはせず濃密な時間を過ごします。
しかし違う中学校に進学したことを切っ掛けに、二人の距離は少しずつ遠くなっていくのです。

冷吟閑酔(れいぎんかんすい)

冷吟閑酔」は、さりげなく詩を口ずさみ、のんびりと酔う、という自由で気楽な暮らしを意味する言葉です。

始は島本さんと離れたのち、何人かの女性との付き合いを経て有紀子という女性と結婚します。
有紀子の父の援助で始めたジャズ・バーは繁盛し、二人の娘をもち、一見優雅な生活を送っています。

ブルータスに取り上げられるような流行の先端をいく店を経営している姿は、端からみれば「冷吟閑酔」のような生活を送っているように感じられるでしょう。

しかし有名な雑誌に取り上げられたことから、いくつかの過去が入り交じってしまい「冷吟閑酔」のような暮らしが崩れていきます。

かつて自分の行動が原因で深く傷つけてしまった同級生、イズミの呪縛。
家庭という柔らかな縛りの象徴である有紀子。
まるで自分の分身のように深く繋がっていた島本さん。

その三者が始の中で混ざり合い、物語は加速していくのです。

克己復礼(こっきふくれい)

自分の欲望に打ち勝ち、社会の規範に従って行動することを「克己復礼」といいます。

一度は家族を捨て、島本さんと生きる決意をした始。
しかし島本さんはこつ然と姿を消し、始はわだかまりを抱えたまま仕事と家庭の中に戻っていきます。
自分の衝動を抑えきれない自分自身に対して無力感を覚えながら、始は有紀子に対して「僕には資格なんてないけれど、別れたくない」と伝えます。
そんな始に対して、有紀子はこう言います。

「資格というのは、あなたがこれから作っていくものよ」

一度ならず道をはずれて女性を傷つけてきた始は、有紀子のこの言葉に対してどのような感情をもったのでしょうか。
「克己復礼」の精神をもって、有紀子、ひいては家族との生活に戻れるのでしょうか。

幾多の悩みと有紀子との対話を越え「克己復礼」を望む始が最後に見た風景は、墓地の上に浮かぶ動かない雲でした。
その動かない雲は、消えてなお心に爪痕を残した島本さんの存在なのか、それとも家族の中で身動きが取れなくなった始自身なのか。
たとえそのどちらであっても、過去は決して変わることはありません。

この小説は、そんなわだかまりを抱えたままでも生き続けなければならないという、国境の南にも太陽の西にも行くことが出来ない人たちへ向けた、ささやかな鎮魂歌のようなものではないでしょうか。

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