江戸川乱歩(えどがわらんぽ)
1894〜1965年、三重県出身。
大正期から昭和にかけて活躍した推理小説家。「江戸川乱歩」というペンネームは、アメリカの作家エドガー・アラン・ポーをもじったもの。
以下、彼の小説に出てくる四字熟語をいくつか紹介します。
◎江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』
「不倶戴天(ふぐたいてん)」
まるで不倶戴天の仇ででもある様に罵しっている者もあれば、蝙蝠の様に、どちらへ行っても、都合のいいお座なりを云って、蔭でペロリと舌を出している者もあります。
「古往今来(こおうこんらい)」
犯人自身が、探偵をその殺人の現場へ案内するなんて、古往今来ないこったろうな
「奇想天外(きそうてんがい)」
天井の節穴から、毒薬を垂らして、人殺しをする! まあ何という奇想天外な、すばらしい犯罪だろう
◎江戸川乱歩『人間椅子』
「荒唐無稽(こうとうむけい)」
それは、夢の様に荒唐無稽で、非常に不気味な事柄でした。でも、その不気味さが、いいしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます。
「驚天動地(きょうてんどうち)」
これは実に、私に取っては、まるで予期しなかった驚天動地の大事件でございました。
◎江戸川乱歩『少年探偵団』
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」
彼はにくにくしく言いながら、傍若無人に地下室の出口のほうへ歩いていこうとするのです。
「大胆不敵(だいたんふてき)」
ああ、なんという大胆不敵、傍若無人の怪物でしょう。こんどこそは、さすがの名探偵明智小五郎も、賊の先まわりをする力がなかったのです。
「変幻自在(へんげんじざい)」
日本一の私立名探偵と、その配下の少年探偵団、相手は、お化けのような変幻自在の黒怪物、ああ、このたたかいが、どのようにたたかわれることでしょう。
「艱難辛苦(かんなんしんく)」
艱難辛苦もいとわない、命なんかいつでもすてるという気風なんだ。
「難攻不落(なんこうふらく)」
いくら二十面相が魔法使いだといっても、こんどこそは手も足も出ないにきまっている。わしの店は、まるで難攻不落の堡塁のようなもんだからな。
◎江戸川乱歩『怪人二十面相』
「一日千秋(いちじつせんじゅう)」
明智さん、ぼくは、どんなにかきみに会いたかったでしょう。一日千秋の思いで待ちかねていたのですよ。
「中肉中背(ちゅうにくちゅうぜい)」
金モールいかめしい制服につつまれた、相撲とりのようにりっぱな体格の警視総監、中肉中背で、八字ひげの美しい刑事部長、背広姿でツルのようにやせた白髪白髯の北小路博士
「用心堅固(ようじんけんご)」
では、このばかばかしく用心堅固な建物は、いったい何者の住まいでしょう。警察のなかった戦国時代ならば知らぬこと、今の世に、どんなお金持だって、これほど用心ぶかい邸宅に住んでいるものはありますまい。
「百戦錬磨(ひゃくせんれんま)」
さすがに百戦錬磨の名探偵、にくらしいほど落ちつきはらっています。
「高手小手(たかてこて)」
見ると、下男部屋のすみっこに、作蔵じいやとそのおかみさんとが、高手小手にしばられ、さるぐつわまでかまされて、ころがっているではありませんか。